2015 年 76 巻 10 号 p. 2422-2426
左上大静脈遺残に右上大静脈欠損を合併した食道癌に切除術を行った報告例は非常に少ない.症例は72歳,男性.食欲不振を主訴に近医を受診し,食道扁平上皮癌を指摘され当科紹介となった.既往歴は,連合弁膜症(大動脈弁閉鎖不全症,僧帽弁閉鎖不全症)であった.3D-CT検査で左上大静脈遺残,右上大静脈欠損が判明した.腹臥位胸腔鏡下食道切除,腹腔鏡補助下胃管作製,後縦隔経路で食道再建術を施行した.胸腔鏡所見で,右上大静脈欠損,無名静脈,通常より極めて細い奇静脈弓を認めた.術中の循環動態は安定していた.術後合併症はなかった.食道癌手術を安全に施行するために,術前に大血管異常を診断することは重要であると思われた.