日本臨床外科学会雑誌
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症例
腹腔内膿瘍を契機に発見された消化管重複症の1例
水元 孝郎阿部 真也大熊 利之箕田 誠司富安 真二朗金光 敬一郎
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2009 年 70 巻 6 号 p. 1717-1721

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抄録

消化管重複症は非常に稀な消化管奇形であり消化管のいずれの部位にも発生するが,炎症所見を伴うものは報告では8.6%と少ない.今回われわれは腹腔内膿瘍を契機に発見された消化管重複症の1例を経験したので報告する.症例は69歳,男性.間歇的な腹痛を主訴に当院を受診した.腹部USとCTにて石灰化を伴う小腸壁肥厚を認め,魚骨を誤飲した可能性があることから,消化管異物による腹腔内膿瘍の診断で入院となった.抗生剤などによる保存的加療を行うも炎症所見の増悪を認めたため開腹手術を行った.腹腔内には約5cmの腫瘤を認め,腸間膜内に腸管壁様の構造物を認めた.重複腸管症と判断し,重複腸管とともに小腸部分切除を行った.摘出標本には腸管様構造物が小腸に沿って存在し,病理所見から管状重複腸管と診断された.本例は炎症を伴って発症した消化管重複症であり,異所性胃粘膜,異所性膵組織を伴い,その報告は本例を含めて6例と極めて稀な症例であった.

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© 2009 日本臨床外科学会
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