2008 年 69 巻 9 号 p. 2331-2336
症例は63歳,男性.脳梗塞加療後に貧血の精査行い,上行結腸癌,多発肝転移と診断された.原発巣切除,肝右葉・尾状葉切除,左葉内の腫瘍核出術を施行した.切除標本の病理組織診断は,高分化型腺癌を主体とし,その中に腺管形成の乏しいクロモグラニン陽性の癌細胞を広範に有する大腸腺内分泌細胞癌であった.肝転移巣は内分泌細胞癌のコンポーネントのみが認められた.術後1カ月で残肝に転移巣出現.CPT-11によりPRが得られたが副作用が強く,術後1年1カ月後よりFOLFOX6療法を開始した.これにより,転移巣の更なる縮小を認め,残肝に最大1cmの低吸収域をわずかに認めるのみとなった.術後2年2カ月後からUFT,ホリナートカルシウムによる化学療法を継続中だが,術後3年5カ月の現在まで腫瘍の再燃を認めていない.大腸内分泌細胞癌とその化学療法に関し文献的考察を加え報告する.