応用生態工学
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原著論文
河川での野外実験によるモクズガニの隠れ家に関する選好性の評価
米澤 孝康齋藤 稔山城 考浜野 龍夫中田 和義
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2016 年 19 巻 1 号 p. 1-11

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抄録

本研究では,日本の河川に生息し,食用となっているモクズガニ Eriocheir japonica の日中の好適な隠れ家について野外実験により検討した.河川内に農業用ネットで囲った実験ケージを設営し,その中に 8 種類の河床材料と状態(浮き石状態の巨礫,沈み石状態の巨礫,浮き石状態の大礫,沈み石状態の大礫,中礫,砂,細い枯れ枝を含む落ち葉,沈木)を各 2 区画(1 区画 1 m2)の計 16 区画用意し,その中にモクズガニの成体 69 個体を放流して,翌日以降,日中に 1 日 1 回,12 日間連続して居場所の観察を行った.その結果,本種は日中,浮き石状態の巨礫の下に隠れることが多く(延べ観察個体数全 344 個体の 61.0%),次いで沈木(同 21.2%),浮き石状態の大礫(同 12.8%)の区画を高頻度で利用していた.また,実験個体の甲幅と,隠れていた隙間の入り口の横幅,高さ,奥行きの間には,全てにおいて有意な正の順位相関関係が認められ(横幅:τ=0.232,高さ:τ=0.155,奥行き:τ=0.091),本種が好む隠れ家サイズは体サイズに応じて変化すると考えられた.

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© 2016 応用生態工学会
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