Tropics
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熱帯林の遺伝的多様性と保全
津村 義彦
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2002 年 11 巻 4 号 p. 241-247

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抄録

遺伝的な多様性を保持した持統的林業管理様式の確立は,今日の熱帯林業の重要な目標の―つである。熱帯樹種は様々な花粉媒介者による他殖性であり,そのため花粉および種子を通しての遺伝子流動は熱帯樹種にとって遺伝的多様牲に影響を与える最も重要な要因の 一つである。近年,分子マーカーが森林植物の遺伝的多様性および集団間分化を調査するのに便われてきている。特に高い多型性を示すマイクロサテライトマーカーは森林内の花粉および種子を通 しての遺伝子流動を評価するのによく用いられている。マイクロサテライトマーカーは幾つかのフタバガキ科樹種で交配様式,遺伝構造,遺伝子流動を調査するのにすでに使われている。本論文では アロザイムやマイクロサテライトマーカーを用いた解析で明らかになった フタバガキ科樹種の受粉および交配様式について述べ,それらに影響を与える要因について議論したい。また最後に持続的林業における遺伝子資源保全のための遺伝的指標構築に向けて分子的アプローチの重要性と限界についても議論する。

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© 2002 日本熱帯生態学会
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