脳死・脳蘇生
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Print ISSN : 1348-429X
症例報告
両側瞳孔散大で来院し救命し得た急性硬膜下血腫小児の1例
柴田 あみ佐藤 慎金子 純也北橋 章子工藤 小織畝本 恭子横堀 將司
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2022 年 34 巻 2 号 p. 101-104

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抄録

症例は1歳4カ月の男児。高さ160cmの滑り台の上より墜落して受傷,頭部単独外傷であった。来院時,意識レベルGCS(Glasgow Coma Scale)-4(E1V1M2)で瞳孔は両側5mmに散大し,対光反射も消失していた。全身麻酔を導入した時点で瞳孔不同(右5mm,左3mm)となった。頭部CT検査では正中偏位を伴う右急性硬膜下血腫を認め,脳挫傷などの実質損傷は軽微と判断し,初療室で直ちに穿頭血腫除去術を行った。硬膜を切開すると漿液性の硬膜下血腫が噴出し,血腫排液後に脳の著明な膨隆はなく,硬膜下ドレーンと頭蓋内圧センサーを留置して手術を終了した。術後は小児集中治療専門病院へ転院し,頭蓋内圧モニタリング下に集中治療を継続した。一時は左上下肢軽度麻痺を認めたものの,受傷34日目に明らかな神経学的異常所見なく独歩自宅退院となった。退院後の認知・運動機能は年齢相応であり,成長・発達にも特記すべき異常はなく経過している。小児の急性硬膜下血腫においては早期の自然吸収例も報告されているが,今回のように来院時に両側瞳孔散大であった症例はまれである。本症例は積極的治療を行った結果,転帰良好であった。両側瞳孔散大症例は救命困難であり手術適応外と判断されることも多いが,本症例のように予後不良と判断される症例の中にも,救命可能さらに良好な転帰症例も存在する。とくに小児の発症まもない症例では可及的速やかに穿頭血腫ドレナージなどの治療を行うべきである。

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2022 日本脳死・脳蘇生学会
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