Medical Mycology Journal
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総説
2011年次皮膚真菌症疫学調査報告
清 佳浩
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2015 年 56 巻 4 号 p. J129-J135

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抄録

日本医真菌学会疫学調査委員会による2011年度の皮膚真菌症の調査成績を報告する.方法および調査項目は前 4 回 (1991・1992, 1996・1997, 2002, 2006) に準じ,全国に分布した皮膚科外来 12 施設において調査用紙に従った検索を行い,結果を集計した.
1. 全施設をあわせた年間の総患者数 (その年における総新患数) は 36,052 名であった.
2. 疾患別では皮膚糸状菌症が最も多く 2,980 例,ついでカンジダ症 378 例,マラセチア症 152 例であった.
3.皮膚糸状菌症の病型別では,多い順に足白癬 1,930 例 (男980,女950),爪白癬 780 例 (男409,女371),体部白癬 203 例 (男132,女71),股部白癬 112 例 (男86,女26),手白癬 43 例 (男25,女18),頭部白癬・ケルスス禿瘡 16 例 (男13,女3) の順であった.
4.足白癬,爪白癬は夏季に,また人口比では主として高齢者に多く見られた.
5.原因菌別ではT. rubrumは最多で約 80 %, T. mentagrophytesは約 10 %であった.その他の菌種ではM. canisが 5 例とやや増加し,M. gypseumE. floccosumが少数であることは以前の報告と同様であった.一方,T. tonsuransは13 例と増加している.
6.カンジダの全症例数は 378 例で男女の比率は全症例の平均で1 : 1.4であった.これはこれまでの報告とほぼ同頻度である.病型の推移について話すが,男女差が顕著な病型は以前からの報告と同様に爪囲爪炎,指間びらん症であった.間擦疹は最も症例数が多い病型である.男女差はあまりない.おむつ部に生じる乳児寄生菌性紅斑は紙おむつの改良によってずいぶん減少した.
7.マラセチア症は 152 例報告され,そのうちマラセチア毛包炎は 55 例であった.

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© 2015 日本医真菌学会
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