日本医真菌学会雑誌
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総説
真菌多糖の免疫系による認識とその活性化作用
安達 禎之大野 尚仁
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2006 年 47 巻 3 号 p. 185-194

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抄録

Candida albicans などの真菌の細胞壁には(1→3)-β-D-glucanが含まれている. 樹状細胞やマクロファージに発現するC-typeレクチンに属するDectin-1はβ-glucanに結合する膜タンパク質として菌体の認識に関わっている. しかし, 真菌感染あるいは真菌に対応する免疫機構が関連する疾患においてDectin-1がどのような役割を演じているかは明確ではなく, これらを明らかにすることは感染防御や炎症性疾患の発症と対策を考慮するために重要であると考えられる. Dectin-1のβ-glucan認識能と細胞活性化能を解析するために, Dectin-1変異体およびDectin-1モノクローナル抗体を作製し, 結合活性に関するアミノ酸残基を他のC-typeレクチンと比較した. その結果, Dectin-1はDC-SIGNなどのmannose結合性C-typeレクチンとは全く異なるアミノ酸残基を用いて, Ca2+非依存的にβ-glucanを認識することが示された. Dectin-1による細胞の活性化機構の解析には従来, β-glucanを主成分とする酵母Saccharomyces cerevisiae 由来のzymosanが汎用されている. zymosanは, TLR2発現細胞に作用しNF-κBの活性化を引き起こす. Dectin-1はTLR2発現細胞においてzymosanのNF-κB活性化能を促進した. この促進作用はβ-glucan非結合性Dectin-1変異体では起こらないことから, β-glucanの認識が重要であった. 一方, zymosanのクロロホルム-メタノール処理物はDectin-1結合性を保持しているにも関わらずTLR2との共発現でもNF-κBを活性化できなかった. Candida 由来の精製β-glucanも同様に共発現細胞でも全くNF-κBの活性化を示さないことから, Dectin-1によるβ-glucan結合シグナルのみではNF-κBを活性化するには不十分で, Dectin-1以外の受容体からのNF-κB活性化シグナル誘導も重要であることが示唆された.

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© 2006 日本医真菌学会
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