日本口腔保健学雑誌
Online ISSN : 2434-7116
Print ISSN : 2434-7108
原著
乳酸菌による歯周病原性菌Porphyromonas gingivalisに対する殺菌作用について
平野 真澄岡 俊哉三上 正人今井 あかね
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2019 年 9 巻 1 号 p. 10-17

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抄録

 歯周病は口腔内の病原性菌の感染によって引き起こされる疾患で,Porphyromonas gingivalisP. gingivalis)は慢性歯周炎の主な原因である.現在その予防には,歯ブラシや抗菌剤などによるプラークコントロールが用いられているが,その他に近年,プロバイオティクスと呼ばれる有用微生物を用いた感染予防が注目されている.そこで本研究では,プロバイオティクスとして一般的である3種類の乳酸菌,Lactobacillus salivariusLactobacillus acidophilusLactobacillus caseiを用いて,慢性歯周炎の主要原因菌であるP. gingivalisに対する殺菌作用について検討した.乳酸菌とP. gingivalisを同濃度で混合培養し,それぞれの生菌数を確認した.同時に臭い測定も行った.また,乳酸菌を取り除いた乳酸菌培養濾過液を用いてディスク拡散法を行い,P. gingivalisに対する阻止円を測定した.

 3種類の乳酸菌とP. gingivalisの混合培養の結果,何れもP. gingivalisが大幅に殺菌された.臭いの軽減も認められた.乳酸菌培養濾過液のディスク拡散法では,全てコントロールとの間に有意差は認められず,乳酸菌がいない状態ではP. gingivalisの生育に影響を及ぼさなかった.本研究において,乳酸菌を用いたプロバイオティクスが新しい歯周病予防となりうる可能性が示唆された.

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© 2019 日本歯科大学東京短期大学
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