2022 年 49 巻 5 号 p. 397-410
非アルコール性脂肪肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)と非アルコール性脂肪性肝炎(nonalcoholic steatohepatitis:NASH)の罹患率は世界中で急激な増加をきたしており,医療および社会経済学の両方の観点から重要な健康問題となっている.NAFLDはメタボリックシンドロームの肝臓の表現型と見なされており,メタボリックシンドロームの危険因子と関連していると報告されている.そのためNAFLD/NASHは肝臓の特異的疾患だけでなく,全身疾患に関与すると認識されるべきと考えられている.肝生検はNASHの診断やNAFLD患者における肝線維症のステージングのためのゴールドスタンダードとして推奨されている.しかしながら,肝生検はコストが高く,合併症リスクも低くなく,医療資源への負荷が大きいため,このように罹患率の高い状況において侵襲的な検査である肝生検のみが正式な評価方法であるという考えが最適とはいえない.よって,NASHから肝硬変へ進行するリスクを評価し,心血管系有害事象のリスクを評価し,HCC早期発見のサーベイランスの必要性を検知し,NAFLD/NASH患者の治療の際の道標となる,肝線維化評価のための信頼性の高い非侵襲的手法の開発が求められている.この総論では,NAFLD患者の肝線維化ステージや脂肪変性度を評価するための超音波エラストグラフィ(Real-time Tissue Elastography®,vibration-controlled transient elastography,point shear wave elastography,およびtwo-dimensional shear wave elastography)の原理と近年の臨床応用に焦点を当てる.