2016 年 28 巻 3 号 p. 598-607
本稿では,列車運転のための視覚的スキルを特徴づける注視パターンを抽出するために,運転年数の異なる列車運転士の注視行動データに対してグラフクラスタリング法の一つであるMarkov Cluster Algorithmを適用した.その結果,前方を介して他の注視領域群を走査する視線移動が運転士らの基本注視パターンとして抽出されるとともに,このパターンの「強度」に熟練度による差異が存在することが明らかになった.さらに,非熟練者が基本注視パターンからの逸脱を頻発させる運転局面について調査したところ,非熟練者にとって作業負荷の大きいタスクが複合的に発生していたことが確認された.