可視化情報学会論文集
Online ISSN : 1346-5260
ISSN-L : 1346-5252
乱流混合層中の大規模構造が乱流プラントル数に及ぼす影響
高牟礼 光太郎酒井 康彦伊藤 靖仁岩野 耕治
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2019 年 39 巻 4 号 p. 1-10

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抄録

本研究では,乱流プラントル数に対する大規模渦の構造の影響を直接数値計算により明らかにすることを目的とした.主な結果として,乱流プラントル数は大規模渦の構造に支配的な発達遷移領域において,通常の乱流場の値よりも小さな値をとることがわかった.この時,流れ場およびスカラ場の可視化から,発達遷移領域における流れ場は混合層中における速度分布が連続的に均されているのに対して,スカラ場は流入時のスカラ濃度を保ったまま渦中に留まり続けていることがわかった.レイノルズ応力方程式とスカラフラックス方程式の収支分析から,運動量とスカラ輸送の相違の原因は圧力に関連する項(すなわち,圧力歪相関項,圧力スカラ勾配相関項,および圧力拡散項)によって引き起こされることを明らかにした.現象的には,大規模な渦が共存する場において,運動量は圧力の影響を受けて逆勾配方向に輸送される傾向が見られるが,スカラ場ではこれらの影響を受けないために順勾配方向に輸送される.このために,運動量輸送とスカラ輸送の駆動力に差が生じ,乱流プラントル数の低下を引き起こしていることがわかった.

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© 2019 社団法人 可視化情報学会
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