日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
介護老人保健施設における認知症高齢者に対する意思決定支援の実態と関連要因
鈴木 みずえ浅井 八多美藤井 さと子内山 由美子佐藤 晶子金盛 琢也金森 雅夫
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2022 年 59 巻 3 号 p. 312-322

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抄録

研究目的:本研究の目的は,看取りに取り組んでいる介護老人保健施設のケアスタッフを対象に本人の日常生活の意思決定や人生最期の段階の医療における認知症高齢者に対する意思決定支援とその関連要因を明らかにすることである.研究方法:2020年8月に介護老人保健施設のケアスタッフを対象にアンケート調査を実施した.結果:対象者は45名(男性16名35.6%,女性29名64.4%)であった.平均年齢は42.2(±12.3)歳,介護老人保健施設での経験年数は17.4(±10.7)年,施設における看取りの経験は9割以上であった.認知症高齢者に対する意思決定支援の実施状況について因子分析した結果,第1因子「意思を形成するための支援やコミュニケーション」,第2因子「意思決定を表出・実現するための支援やコミュニケーション」,第3因子「意思決定の実現に向けての理解・コミュニケーションと家族支援」と命名された.3因子の合計点は「認知症高齢者本人の視点を重視したケアに自信がある」のある人がない人に比べて有意に高かった.認知症高齢者に対する意思決定支援の実施状況の3因子を従属変数とした重回帰分析では日本語版ADQのパーソンフッドが有意な促進因子であった.意思決定支援において実施の頻度が高いのは第1因子であるが,一方,最も実施が少ないのは,第2因子であった.認知症高齢者に対する意思決定支援の実施状況の各因子をそれぞれ従属変数とした重回帰分析では3因子全てに日本語版ADQのパーソンフッドが有意な促進要因であった.結論:認知症高齢者に対する意思決定支援の実施に頻度に関しては「意思を形成するための支援やコミュニケーション」が高かった.意思決定支援のケアの実践には,パーソン・センタード・ケアが関連していることが示唆された.

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© 2022 一般社団法人 日本老年医学会
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