日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原著
高齢発症関節リウマチ症例の治療に関する検討
髙井 千夏小林 大介伊藤 聡村澤 章和田 庸子成田 一衛中園 清
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2018 年 55 巻 2 号 p. 251-258

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抄録

目的:当院における高齢発症関節リウマチ(RA)症例の初期治療と臨床経過を明らかにする.方法:1.80歳以上でRAを発症した55例(高齢発症群)の診断時背景,初期治療内容,治療反応性,合併症を調査し,40~59歳で発症した119例(非高齢発症群)と比較した.2.80歳以上でRAを発症し当院で生物学的製剤を導入された19例の導入時背景,治療反応性,合併症を調査した.結果:1.高齢発症群の診断時平均DAS28-ESR(DAS),HAQ-DI(HAQ)は非高齢発症群より有意に高かった(4.91±1.31 vs 4.41±1.47,p=0.043,1.2±0.9 vs 0.5±0.6,p<0.01).高齢発症群では初期治療として87.3%に従来型合成抗リウマチ薬(csDMARDs)が使用されたがMTX使用例はなかった.56.4%にプレドニゾロン(PSL)が使用され非高齢発症群より有意に高率であった(p<0.01).3,6カ月後両群ともDAS,HAQは有意に低下したがHAQは高齢発症群で高かった.PSL導入例31例は非導入例24例に比べ3カ月でDAS,HAQが有意に大きく低下した(ΔDAS:2.55±1.83 vs 1.83±1.23,p<0.01,ΔHAQ:0.9±1.0 vs 0.3±0.6,p=0.027).感染症合併は高齢発症群で多かった.2.19例の導入時DASは4.93±1.17,HAQは1.5±1.0であった.このうち6カ月間観察できた15例のDAS,HAQは6カ月後有意に低下した.考察:当院では高齢発症例でMTX使用率が低く大部分はMTX以外のcsDMARDsとPSL併用で短期的な疾患活動性低下や身体機能改善を得られたが生物学的製剤を要する重症例もあった.現在高齢発症RA治療の明確な推奨はないが合併症リスクへの配慮と速やかな疾患コントロールをどのように目指すべきか,今後の検討課題と考えられた.

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