日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
若手企画シンポジウム2:高齢者のための再生医療~研究の現状と未来への展望~
1.脳梗塞患者に対する再生医療の現状とその未来
田口 明彦
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2013 年 50 巻 3 号 p. 359-361

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抄録

目的:現在わが国では急速な高齢化社会を迎えており,それに伴う高齢身体障害者の増加が極めて深刻な社会問題となっている.平成20年度厚生労働白書によると,65歳以上の身体障害者は216万人と依然上昇傾向で,寝たきり者の約1/3が脳血管障害患者であり,脳血管障害に対する新規治療法開発は我が国にとり非常に重要な課題である.方法:我々は脳梗塞後に誘導された神経幹細胞の生着・機能には血管再生が必要不可欠であり,骨髄単核球投与で血管再生・神経機能回復が促進することを報告してきた.これらの知見に基づき自己骨髄単核球細胞移植による臨床試験を実施中である.プロトコールの概要は,(1)75歳以下の重症心原性脳塞栓症患者が対象,(2)脳梗塞発症7日~10日目に骨髄細胞を採取(低用量群25 ml,高用量群50 ml),(3)比重遠心法による単核球分画の分離,(4)同日に静脈内に全量投与である.結果:既に低用量群は終了しているが重篤な有害事象は観察されておらず,また脳梗塞のサイズ・部位に比し良好な機能回復を示す症例も観察されている.結論:現在,治療対象群を拡大した多施設共同臨床試験に向けたプロトコール作成および安全で簡単な細胞治療用骨髄単核球精製デバイスの開発を行っており,細胞治療をより普遍的な治療法として普及させるための研究を行っている.

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© 2013 一般社団法人 日本老年医学会
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