日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
原発性骨粗鬆症におけるアルファカルシドールの骨量, 骨代謝への長期投与の効果
カルシウム製剤との比較検討
中塚 喜義稲葉 雅章荒谷 秀之揖場 和子佐藤 哲也小池 達也三木 隆己西沢 良記森井 浩世
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1997 年 34 巻 7 号 p. 569-576

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抄録

骨粗鬆症に対する活性型ビタミンD3の長期投与の効果については, カルシウム (Ca) 摂取量の少ない日本人において骨量減少, 骨折率の改善効果が示されている. 骨量が低下し骨脆弱性の高い33名 (平均年齢71.5±7.8 (SD) 歳) の高齢者において骨量, 骨折頻度, 骨代謝について1α(OH)D3およびCa製剤との併用の安全性ならびに有効性についてクロスオーバーデザインで検討した. 対象は無作為にA-C群17名 (12カ月間, 1α(OH)D31μg/日と乳酸Ca併用投与後, 12カ月間, 乳酸Ca単独投与) とC-A群16名 (12カ月間, 乳酸Ca単独後, 12カ月間, 1α(OH)D3を併用投与) に分け24カ月観察した. 腰椎骨密度 (L2-4BMD) は, A-C群においては1α(OH)D3投与後6カ月後に基礎値により3%増加し, 12カ月後には4%の増加に維持された. C-A群では, L2-4BMDは6カ月後に約2%減少し, その減少率は12カ月後も維持され, A-C群との間に6カ月後, 12カ月後に各々有意差を認めた (各々, p=0.023, p=0.005). 橈骨遠位1/3骨密度 (R1/3BMD) は, A-C群において6カ月後に平均5%の増加を認めたが, 12カ月後にはその増加は平均1%となった. C-A群においてR1/3BMDは有意な変動を認めなかった. A-C群の1α(OH)D3とCa製剤の併用投与期間の新規脊椎骨折の発生頻度は, C-A群の乳酸Ca単独の投与期間のそれより有意に少なかった (χ2検定, p<0.05). Caを予め投与されていたC-A群の血清Caは1α(OH)D3とCa製剤の併用投与期において, 6カ月, 12カ月後に徐々に上昇したが基準値内の変動であり, 高Ca尿症も認めなかった. 血清 intact-PTH は, A-C, C-A両群で各々26.5±11.3pg/ml, 30.7±10.3pg/mlより試験開始後6カ月において各々19.8±9.7pg/ml, 25.5±9.6pg/mlまで低下したが, A-C群の低下がより大きく有意であった (p=0.004).
以上の結果より, 1α(OH)D3の長期投与は, Ca製剤との併用でも安全であり, 骨量減少を予防し, 脊椎骨折の頻度を削減することが示唆された. その効果の機序の一部として副甲状腺機能の抑制が関与していることが考えられた.

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