日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
褥瘡併発患者の背景と圧迫に伴う仙骨部皮膚血流量変化の研究
宮島 良夫浅野 哲一前畑 幸彦松田 ひろし福本 一朗
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1997 年 34 巻 6 号 p. 486-491

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抄録

褥瘡好発部位である仙骨部が圧迫された場合, 除圧媒体の有無が皮膚血流量に与える変化, そして患者の栄養状態を反映すると思われる臨床生化学検査値と褥瘡併発の関係を知る目的として研究を行った.
対象は病棟入院患者13例 (おむつ不使用・褥瘡無し6例, 布おむつ使用・褥瘡あり5例, 紙おむつ使用・褥瘡あり2例, 平均年齢77.2±7.2歳), 褥瘡ありについては測定部位である仙骨部以外の箇所に発生している患者で, 除圧媒体 (ポリウレタン) 使用の有無による皮膚血流量変化をレーザードップラー血流計で測定した. 生化学データについては入院患者の中でアルブミン (Alb), 総コレステロール (T-chol), 中性脂肪 (TG) の3項目について過去3カ月のデータの揃っていたもの (男性3例, 女性16例, 平均年齢73.6±11.9歳) を抽出した.
その結果, ポリウレタンを敷くことで体位交換前後の皮膚血流量変化に有意差が見られたのは紙おむつ使用群であった. 生化学データでは褥瘡の有無に対してAlb, T-chol に有意差が見られた.
褥瘡予防の観点に立ち, 物理・生化学的な要因の両面から褥瘡併発患者の特性について検討したところ, 褥瘡無しの患者群と比較してAlb, T-chol が有意に低く, 布おむつ自体が圧迫因子として作用するため布おむつの外から除圧目的の媒体を用いても皮膚血流量減少の抑制効果が減ずると考えられた.

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