日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
無症候性脳梗塞に関する研究 (第1報)
背景因子の検討
澤井 伸之山野 繁南 繁敏山本 雄太赤井 真弓野村 久美子土肥 和紘
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1997 年 34 巻 5 号 p. 389-394

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抄録

無症侯性脳梗塞患者は, 脳卒中を発症する危険性が高いとされている. したがって, 無症候性脳梗塞は, 脳卒中危険因子の1つに挙げられている. しかし, 無症候性脳梗塞の発症要因を多変量解析から検討した報告はない. また, 無症候性脳梗塞患者の高血圧症合併頻度は頭部MRIで無症候性脳梗塞のない症例に比して高いと報告されているが, 高血圧症の重症度と無症候性脳梗塞との関連を多変量解析で検討した報告もない. そこで著者らは, 脳卒中発作の既往のない312例 (平均年齢63歳) を対象に頭部MRI撮影を実施し, 無症候性脳梗塞の発症に対する背景因子 (年齢, 性別, 高血圧症, 糖尿病, 高コレステロール血症, 高トリグリセリド血症, 左室肥大, および心房細動) の影響を多変量解析で検討した. さらに, 本態性高血圧症患者を対象に高血圧症病期分類と無症候性脳梗塞との関連についても検討を加えた. 65歳以上が占める頻度, 高血圧症合併頻度, 糖尿病合併頻度, および心房細動合併頻度は, 無症候性脳梗塞のない健常 (N) 群に比して無症候性脳梗塞 (AS) 群で有意に高かった. また, WHO II期に相当する臓器障害合併頻度は, N群に比してAS群で有意に高かった. なかでも左室肥大 (高血圧性心肥大) と高血圧性眼底所見 (Scheie 分類H2) の合併頻度は, N群に比してAS群で有意に高かった.
以上から, 無症候性脳梗塞発症の危険因子は, 年齢, 高血圧症, 糖尿病, および心房細動であることが示唆される. また, 高血圧症患者における無症候性脳梗塞発症には, 左室肥大 (高血圧性心肥大) と高血圧性眼底所見 (Scheie 分類H2) が予知指標になることも示唆される.

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