日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
大学における老年医学教育に関する研究
医学部学生の老年学・老年医学についての意識調査に関する研究 (第2報)
袴田 康弘若月 芳雄北 徹小沢 利男深沢 俊男林 潤一蟹沢 成好松瀬 健村川 浩一入来 正躬
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1996 年 33 巻 6 号 p. 452-459

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抄録

高齢化社会に対応できる医師を育成するため, 老年医学の発展は大いに期待されているが, この期待に対し, 医学教育体制が充分に応えているかを検討する必要がある. 老年医学教育の現状を調査するために, 老年医学講座を設置していない20の医科系大学の6年生を対象にアンケート調査を実施した. 老健施設への見学は42%の学生が経験しているに過ぎず, 学生の過半数が老年医学の講義は難解であり講義内容は不十分 (59%) と考えている. 老年者と関わるボランティア活動の学生の数はむしろ多く, 老人福祉への関心も高い数値を示すなど, 高齢社会への関心は高いものがあるが, 高齢者の疾患, 基礎老化学などについての講義の不足などがあるとし, 老年医学講座は56%が各大学に設置されるべきと回答し, 14%が不要としている.
老年医学講座を設置していない大学では, 痴呆(73%), 脳血管障害(51%), 癌(24%), 骨粗鬆症(19%)の順に老年者の特徴的疾患と学生は捉え, 大学間に格差は認めなかった. 一方, 老年医学講座を設置している大学の調査では, この序列が痴呆 (77%), 脳血管障害 (44%), 骨粗鬆症 (29%), 癌 (16%) の順で, 各大学の教育内容により特定の疾患を重要と考える傾向がみられるなど, 学生は老年医学の捉え方に影響を受けていると考えられた. 現状では老年学・老年医学の教育においてわが国では統一的な体系がなく, 各大学でそれぞれの老年医学教育が行われていることが明らかになった.

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