症例は, 81歳, 女性. 平成元年12月25日肺炎にて入院. 平成3年2月に腎不全による骨代謝障害が疑われたため, 骨生検を施行. 生検部位より出血が続き, 貧血を来したため, 同年3月より含糖酸化鉄を投与した. 投与開始後23日目の血液検査で, 低リン血症を認めた. 骨軟化症の危険性が存在したため, 活性型ビタミンDの効果に期待したが, 低リン血症は持続した. そこでEDTA-2Na負荷試験を行い, 尿細管でのリンの再吸収能を調べた. その結果, 本症例には副甲状腺機能障害と腎尿細管のリン再吸収障害が存在していると考えられた. また組織において代謝されるショ糖並びに貯蔵された鉄によりリンの分布異常が生じ, これらが含糖酸化鉄の投与による低リン血症を引きおこしたと考えられた. なお乳酸カルシウムが腸管でのリンの吸収を抑制した可能性も無視できない.