日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
高齢者高血圧における左室拡張機能99mTc 心プールシンチによる検討
成田 充啓栗原 正村野 謙一宇佐見 暢久亀山 正邦
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1990 年 27 巻 4 号 p. 463-468

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抄録

心肥大以外に合併症のない高齢者高血圧例における左室拡張機能を99mTc心プールシンチを用いて検討した. 対象は健常例17例と高血圧28例の計45例で各々若年群 (60歳未満) と老年群 (65歳以上) に区分した. いずれも左室駆出率 (≧55%) で左室壁運動異常のない症例である. 左室収縮期指標として左室駆出率以外に収縮早期1/3における平均駆出速度 (ERm) と最大駆出速度 (PER) を, 拡張期指標として拡張早期1/3における平均充満速度 (FRm) と最大充満速度 (PFR) を求めた. 拡張期指標は高血圧症例で同年齢の健常群より有意に低値を示し, 殊にFRmは健常群と高血圧群のオーバーラップが少なかった. 健常例においてFRm, PFRは年齢と負の相関を, 収縮期指標と正の相関 (FRm はERmと, PFRはPERと) を示した. 高血圧症例ではこれに加え, 心エコー図で求めた左室壁厚と r=-0.566 (p<0.01) の負の相関を示した. 殊に, 高血圧老年群ではFRmと左室壁厚の相関は r=-0.702と高度であり (高血圧若年群ではr=-0.458, NS), 高齢者では左室肥大の程度と拡張機能障害度が密接に関連している事を示唆した. またFRmと左室収縮期指標であるERmの相関も高血圧老年群ではr=0.828と高度であった (高血圧若年群ではr=0.331, NS). 即ち, 左室拡張機能は年齢とともに低下するとともに, 高血圧症例では左室肥大の影響を受ける. 殊に老年高血圧症例では若年者に比し, 左室壁肥大の程度が直接的に左室拡張機能に影響し, この拡張機能の低下が収縮機能低下に反映されやすいと考えられた.

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