日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
尿の酸性ムコ多糖ならびに総結合ヘキソースと加齢ならびに耐糖能との関係
ゲル濾過カラムクロマトグラフィーによる検討
井沢 和弘金沢 武道渋谷 耕司泉山 伸村岡 裕子盛 英機早津 正文小野寺 庚午目時 弘文松井 哲郎
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1980 年 17 巻 5 号 p. 568-575

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抄録

尿の酸性ムコ多糖 Acid Mucopolysaccharide (AMPS) ならびに総結合ヘキソース Total Binding hexose (TBH) と加齢ならびに耐糖能との関連を研究するために, 尿のAMPSならびにTBHのセファデックスG-15カラムクロマトグラフィーを施行して検討した.
対象は若年群 (20歳以上30歳未満) 5名, 老年群 (60歳以上) 5名ならびに老年糖尿病群 (60歳以上) 6名である.
I) 24時間尿をセフアデックスG-15カラムクロマトグラフィーで展開すると尿中TBHは, Fr-I, Fr-IIならびにFr-IIIの3つの画分に分かれた. AMPSの溶出曲線はTBHほど明瞭に区分けできないが, 分子量の最も大きな部分は明らかなピークを示した.
II) 24時間尿AMPS量は, 耐糖能正常な高齢者では, 耐糖能正常な若年者に比し低値である. これは, 3画分すべての低値によるものである.
III) コントロール不良な高齢糖尿病患者では同年代の糖尿病でない者に比し, 24時間尿AMPS量は高値の傾向にある. これは, 分子量の最も小さい画分であるFr-IIIの高値によるものである.
IV) 24時間尿TBH量は, 耐糖能正常な高齢者では, 耐糖能正常な若年者に比し有意に低値である. これは, 3画分すべての低値あるいは低値の方向によるものである.
V) コントロール不良な高齢糖尿病患者では同年代の糖尿病でない者に比し, 24時間尿TBH量は高値である. これは, 3画分すべての高値あるいは高値の方向によるものである.
一般に加齢の方向と糖尿病の方向とは, 動脈硬化との関連を考えるにあたって, 同一方向の現象のように考えられがちである. しかし, 動脈硬化と関連のあるAMPSならびにTBHの尿中における存在様態についての著者らの成績からみると, 加齢と糖尿病とは異なる現象と考えざるを得ない.

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