2020 年 34 巻 2 号 p. 121-125
症例は38歳男性.近医にて前縦隔腫瘍を指摘され当科紹介となった.CTで境界明瞭な4×3.5×3 cmの充実性腫瘍を前縦隔に認め,PETでは同部位にSUVmax 7.04の異常集積を認めた.またPET検査において,膵鉤部にもSUVmax 3.65のFDG異常集積を認めた.
高Ca血症とCTで副甲状腺腺腫が疑われること,父がMEN1型であることからMEN1型に合併した胸腺カルチノイドと診断し,胸腺全摘術を施行した.病理診断は腫瘍部位に卵円形核を持つ多角形細胞が増生し,ロゼット構造が散見,免疫染色では神経内分泌マーカーが陽性であった.核分裂像は8個/10 HPFであり非定型的カルチノイドと診断された.MEN1型は胸腺カルチノイドの25%に合併するとされ,特に非定型的カルチノイドは予後不良とされている.