日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
鼠径リンパ節穿刺によるICG蛍光法が肺癌術後の乳糜漏出部の同定に有用であった1例
武田 亜矢上田 和弘永田 俊行前田 光喜今村 智美佐藤 雅美
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2020 年 34 巻 2 号 p. 116-120

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抄録

症例は65歳,男性.同時多発肺癌に対して,胸腔鏡補助下右肺上中葉切除術と上縦隔ならびに#7リンパ節郭清術を施行し,郭清部位にfibrin glueを散布して閉胸に至った.術後2日目に乳糜胸水を認め,絶食管理でも1日1.5 l以上の排液が続くため,術後3日目に再手術とした.

麻酔導入後,仰臥位で体表エコー下に鼠径リンパ節へインドシアニングリーン(ICG)を穿刺注入し,体位変換を行った.胸腔内を観察すると,近赤外光カメラで気管前に蛍光ICGの貯留を認め,責任部位を同定し得た.同部位をZ縫合で修復してfibrin glueを散布し,さらに気管支断端を被覆した遊離脂肪織の一部を上縦隔にも充填し,fibrin glueで固定した.

再手術後4日目に食事を再開しても乳糜の再燃なく,再手術後12日目に自宅退院した.

ICG蛍光法は,乳糜の漏出部位の同定に簡便でかつ有用であった.

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