1997 年 47 巻 5 号 p. 325-329
解離性大動脈瘤発症を契機に発見された副腎腺腫由来のクッシング症候群の1手術例を経験した.症例は高血圧加療中の44歳女性で, 突然の前胸部痛で発症し, 胸部CTでDeBakey I型の解離性大動脈瘤と診断された.保存的降圧療法による経過観察中に左副腎腫瘍を指摘され, 精査の結果副腎腺腫によるクッシング症候群の合併が判明した.まず上行大動脈置換術を先行し, 次いで6週間後に左副腎腫瘤摘出術を行い, ともに結果は良好であった.病理学的に腫瘍は良性の副腎腺腫であった.クッシング症候群に解離性大動脈瘤を合併した症例は極めて稀なことから, 若干の文献的考察を加えて報告した.