肝臓
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症例報告
肝細胞癌の胆管浸潤による胆道出血,閉塞性黄疸に対し緩和的放射線治療が奏功した1例
遠藤 伸也川口 真矢浅原 和久板井 良輔寺田 修三白根 尚文栗山 健吾
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2020 年 61 巻 9 号 p. 447-454

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抄録

症例は75歳男性.肝細胞癌に対し肝動脈化学塞栓療法を行ってきたが,胆管浸潤による閉塞性黄疸を来した.金属ステントを肝内胆管に留置したが,2カ月後に閉塞性黄疸が再燃した.十二指腸乳頭から血液の流出を認め,内視鏡的逆行性胆管造影を施行すると胆管内は血腫で充満し金属ステントは腫瘍により閉塞していた.出血源は肝細胞癌の胆管浸潤部と判断し,肝内胆管に経鼻胆管ドレナージチューブを留置した.肝予備能や腫瘍血管の選択が難しいことなどを考慮し,緩和的放射線治療を施行した.胆管浸潤部に前後対向二門照射30 Gy/10回を開始したところ次第に血性胆汁は消失した.治療終了後,血腫が消失したことを確認し新たにinside stentを留置した.その後貧血や黄疸の再燃なく肝細胞癌の治療を継続できた.肝細胞癌による胆道出血に対し放射線治療が有効であった報告はなく,貴重な症例と考えられた.

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© 2020 一般社団法人 日本肝臓学会
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