2007 年 48 巻 1 号 p. 27-32
症例は61歳女性.54歳時クモ膜下出血にて入院の際に,HCV抗体陽性を指摘され,以後,某病院にて経過観察されていた.平成14年より肝障害持続し,C型慢性肝炎に対しInterferon療法施行するもうつ症状にて中止.経過観察中に腹部CTにて肝細胞癌の出現を認め平成17年1月20日入院.2月1日腹部血管造影を施行し,左肝動脈より動注用アイエーコールを動注後,2月9日に肝部分切除を施行した.腫瘍部は全体が壊死に陥り,腫瘍被膜下にわずかにvividな腫瘍組織を認めるのみであった.CDDPは癌細胞内DNA鎖と結合,DNA合成とそれに続く癌細胞分裂を阻害することで殺細胞効果を示すが,動注用アイエーコールはCDDPを動注内投与に適した微粉末にした新規剤型の抗癌剤であり,従来の静注用CDDPと比較して濃度依存性殺細胞効果が高まることが期待されている.今回我々は動注用アイエーコールによる腫瘍壊死を病理学的に確認できた1例を経験したので報告した.