2009 年 45 巻 2 号 p. 63-74
都市域において地下水涵養により水源を確保するためには、浸透させる水量、水質の確保と土壌浄化力の維持が必要である。下水処理水は都市域での安定な供給水源であるものの、地下水涵養においては多様な化学物質や微生物の安定除去が求められる。本研究では、地下水涵養の実験系として小型土壌カラムを用い、実下水処理水を通水した場合の土壌微生物相への影響について検討した。カラムには二次処理水(未消毒・塩素消毒・UV消毒)を通水し、PCR-DGGE法により土壌微生物相の変化を解析した。また、処理水中の溶存態有機炭素(DOC)量を測定することにより土壌による有機物除去能を調べた。土壌微生物相は処理水を通水することにより一時的に変化するものの、30日目以降にはもとの微生物相が回復し始めた。DOC除去能は通水28日目までに一旦低下が見られたが、41日目以降にはもとの土壌微生物相の回復と共にDOC除去能も回復し始めた。土壌粒子への吸着破過によるDOC除去効果の低下を微生物分解が補ったことで、DOC除去能の改善となって表れたと考えられる。消毒法にかかわらず下水処理水の通水によって土壌微生物生態系は著しく攪乱されることはなく、有機物除去能も保持できることが示唆された。