マイコトキシン
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安全で効果的な赤かび病防除剤の開発に向けて
西内 巧木村 真
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2021 年 71 巻 1 号 p. 13-19

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抄録

 赤かび病菌(Fusarium graminearum等)が,コムギやオオムギ等に感染すると,本菌が産生するトリコテセン系かび毒が穀物に混入し,ヒトや家畜に健康被害を及ぼす.赤かび病に強い抵抗性を示す栽培品種が開発されてないことから,開花期のムギの穂に殺菌性農薬を複数回散布することで防除している現状であり,残留農薬の問題に加えて,耐性菌の出現も報告されている.これらの状況を踏まえて,我々は天然物を活用して,赤かび病を防除し,かび毒汚染を低減化し得る防除技術の開発を進めている.オオムギの赤かび病抵抗性品種におけるメタボローム解析から,ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)の前駆体であるニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)が,抵抗性・低かび毒品種で有意に蓄積していることを明らかにした.NMNは抵抗性誘導剤として機能し,オオムギやコムギに投与すると,赤かび病による病徴とかび毒蓄積が共に有意に抑制されることを明らかにした.一方,赤かび病菌のかび毒産生機構の解析から,アミノ酸であるL-Thrが赤かび病菌におけるトリコテセン系かび毒の産生を抑制することを見出している.これらの天然物を活用した赤かび病防除及びかび毒低減化技術の開発に向けた取り組みについて紹介する.

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© 2021 日本マイコトキシン学会
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