和牛の勞役中の瓦斯代謝を研究する爲10歳の牝牛を用い,2囘に亙つて實驗をした。第1囘は早春の候(氣温8～11°C)に,第2囘は初夏の候(氣温23～24.5°C)に行つた,仕事は100mの平坦路を橇を牽かせ20往復させた,その際の橇の全抵抗は第1囘は平均65kg,第2囘は平均60kgであつた,尚第1囘の時の牛の體重は569kg,第2囘の時は525kgであつた。呼氣の採取はDOUGLAS bag methodにより10往復直後及び20往復直後に行つた。その主なる結果を要約すれば次の如くである。
(1) 酸素消費量は早春のの候では體重1kg當り1時間に10往復直後は0.289L,20往復直後は0.423Lにして,これは静止時の消費量に比較して前者は2倍弱後者は3倍弱まで増加している,初夏の候には此の數値は10往復直後は0.657L,20往復直後は0.896Lで何れも早春の候の結果の約2倍強である。
(2) 炭酸瓦斯生産量は早春の候では體重1kg営り1時間に10往復直後は0.229L,20往復直後は0.354Lにして,静止時に比較するとその生産量は前者は2倍強後者は3倍強に増加している。初夏の候では此の數値は10往復直後は0.524L,20往後直後は0.783Lにして,これも早春の候の結果の約2倍強である。
(3) 呼吸商は早春の候では10往復直後,0.791,20彼復直後0.836にして,初夏の候では前者0.797,後者0.876である,即ち兩者殆ど差がない。
(4) 勞役による熱發生最は早春の候では10往復直後では静止時の2倍,20往復直後では3倍になる。これが初夏の候では何れも早春の候の約2倍強となる。即ち體重1kg當り1時間の熱發生量は早春の候では10往復直後1.37Cal,(この内炭水化物から0.41Cal,脂肪から0.96Cal)20往復直後,2.05Cal(この内炭水化物から0.97Cal,脂肪から1.08Cal)であるが,初夏の候では前者3.15Cal,(この内炭水化物から1.02Cal脂肪から2.41Cal)後者4.40Cal(この内炭水化物から2.61Cal,脂肪から,1.78Cal)である。
(5) 牛の勞役時の瓦斯代謝量は呼吸數の増加と平行的な關係がある樣に思われる。