生態心理学研究
Online ISSN : 2434-012X
Print ISSN : 1349-0443
特集2: 生態心理学とリハビリテーションの融合
中枢神経系障害患者の動作能力障害に対する水中運動療法の有効性
下堂薗 花枝櫻井 靖一郎髙木 英樹
著者情報
ジャーナル フリー

2018 年 11 巻 1 号 p. 19-22

詳細
抄録

中枢神経系患者の多くは,地上では身体を硬くし,一つの固まりにすることで自発的・自律的に動きにくくなり,全身的な筋緊張のバランスを維持できなくなっている.その為,本来活動すべき筋がスムーズに活動出来ず,不良な運動パターンが強化されていく.このような重力環境下で学習された不良な運動パターンは,異なる環境下での修正が必要であると考え,重力の影響が軽減できる水中環境下において治療効果が期待できると考えた.
そこで本研究では,慢性期中枢神経系障害患者の動作能力障害に対する水中運動療法の有効性を検証することとした.対象は,療養病棟入院中の9 名の中枢神経系障害患者とした.水中運動療法試技は,ハリビック法とラガッツ法を使用し,対象には,週3 40 分の水中運動療法と,週12 回の通常の理学療法訓練を含む,12 週間の治療を実施した.評価項目は,起き上がり動作の質的評価とし,評価は治療前,4 週間後,8 週間後,12 週間後に評価をおこなった.結果,起き上がり動作の質的評価においては,評価者間の高い信頼性が得られ,有意な主効果が認められた.本研究において,水中運動療法は,慢性期中枢神経系障害患者のリハビリテーションにおいて,安全で有益であり,動作を改善するために有効であることが示唆された.

著者関連情報
© 2018 日本生態心理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top