地理空間
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ブラジル北東部サンフランシスコ川中流域における日系入植者の社会経済特性の変遷
山下 亜紀郎羽田 司
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2018 年 11 巻 2 号 p. 129-144

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抄録

本稿は,ブラジル北東部サンフランシスコ川中流域における日系入植者たちの社会経済特性について,入植後から現在までの変遷を踏まえながら明らかにすることを目的とする。大規模灌漑果樹農家として成功した先駆的単独入植世帯の事例では,農地を分割しながら世代交代して現在も農業が継続していた。一方,集団入植世帯の多くも,日系農協組織の解散に見舞われながらも,自ら新たな同業者組合を結成したり,個別に集出荷業者と契約したり,海外市場向けの新品種を積極的に導入したりしながら,果樹農業を発展させていた。当地域の日系人コミュニティは,日系人同士の親睦や次世代への日本語・日本文化の継承に大きな役割を果たしてきたが,近年では,日系・非日系の垣根を超えた地域社会の交流を促進し,現地ブラジル社会へ日本語・日本文化を伝道するという,新しい存在意義や役割も付与されていた。

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