西日本皮膚科
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症例
セツキシマブ・パクリタキセル併用療法中に生じた Leukocytoclastic Vasculitis の 1 例
安富 陽平川上 佳夫篠倉 美理神野 泰輔藤本 裕子三宅 智子山﨑 修森実 真
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2020 年 82 巻 4 号 p. 271-275

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抄録

58 歳,男性。右外耳道有棘細胞癌に対して epidermal growth factor receptor(EGFR)阻害剤のセツキシマブとパクリタキセルの併用療法を 6 カ月間,合計 14 回施行した。最終投与日から 13 日後に四肢に一部血疱や浸潤を伴う点状紫斑が多発し,腎機能障害も認めた。皮膚病理所見では真皮全層の血管周囲に好中球や好酸球の浸潤と核塵を認め,真皮浅層から中層の毛細血管に血管壁のフィブリノイド変性があり,leukocytoclastic vasculitis(LCV)に矛盾しない所見であった。蛍光抗体直接法では真皮上層の血管周囲に C3 の沈着が認められたが,IgA の沈着は認めなかった。セツキシマブ・パクリタキセルを休薬し,プレドニゾロン(PSL) 20 mg/日内服と細胞外液の補液を開始したところ,皮疹,腎機能ともに速やかに改善した。しかし,蛋白尿と尿潜血が持続して検出されたため,PSL 8.0 mg/日を維持量として継続した。 その後外耳道癌が再び増大し,4 カ月後にセツキシマブ・パクリタキセルを再投与したが皮疹の再燃は認めなかった。EGFR 阻害剤投与中に,血管周囲に C3 の沈着を伴う LCV の報告が本症例以外にも 3 例ある。そのうち 1 例では潰瘍化や壊死を伴う臨床像を呈し,1 例では下血を合併していた。本症例では EGFR 阻害剤が LCV 発症の直接の誘因になったかどうかは不明だが,EGFR 阻害剤により LCV が重症化した可能性が考えられる。

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© 2020 日本皮膚科学会西部支部
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