1992 年 34 巻 5 号 p. 459-466
口腔細菌の酸素分圧の応答性を調べる目的で, E.coliの酸素センサーであると同時に嫌気的呼吸系遺伝子群の活性化因子として機能するFNR蛋白質と類似の蛋白質の口腔細菌での存在を調べた。E. coliの精製FNR蛋白質に対する家兎抗FNR血清を用いたウエスタンブロット法で, 嫌気的条件下で増殖できる代表的な5株の口腔細菌のFNR様因子の同定を行った。通性嫌気性細菌であるA. actinomycetemcomitdnsについてはFNR様因子を確認することができたが, 嫌気的呼吸系を有する微好気性細菌や偏性嫌気性細菌あるいは糖発酵やアミノ酸異化代謝をエネルギー獲得系として利用する細菌ではそのような蛋白質は確認できなかった。また, A. actinomycetemcomitansでのFNR様因子の発現量は, その増殖速度の減少に対応して増加し, 培地の酸化還元電位が-250mV付近の微好気的条件下で最大であった。