生後30日から100日までのWistar系ラット上顎第一臼歯を観察の対象とし, 加齢に伴う歯髄終末毛細血管の微細構造学的変化を透過電子顕微鏡で経時的に観察した。
歯髄終末毛細血管は生後30日では象牙芽細胞層の内層にあり, 象牙前質から約5μmでterminal-wabの近傍に位置し, そのほとんどが広い有窓領域と多くの窓をもつ有窓性毛細血管で構成されている。これら終末毛細血管は生後60日になると次第に象牙前質から離れ始め, 生後100日ではすべての毛細血管が象牙芽細胞層の下層に位置するようになる。また有窓性毛細血管は生後40日以後ではほとんど観察されず, 終末血管の大部分は連続性毛細血管で構成されるようになる。
これらの変化のうち, 終末毛細血管の位置的変化は象牙質形成と密接に関係していると思われるものの, 有窓性毛細血管の出現時期は積極的な象牙質形成の時期とは必ずしも一致しておらず, むしろエナメル質の成熟期に対応している。このことはエナメル質形成における歯髄側からの関与を示唆している可能性がある。