日本歯周病学会会誌
Online ISSN : 1880-408X
Print ISSN : 0385-0110
ISSN-L : 0385-0110
高蔗糖飼料飼育によるラット歯周炎の発症とマクロファージの感染防御機能の変化との関連性
市村 光佐藤 巌雄曲 建香下島 孝裕藤橋 弘池田 克己
著者情報
ジャーナル フリー

1990 年 32 巻 1 号 p. 175-188

詳細
抄録

歯周疾患で起こる歯槽骨吸収に関与する骨由来因子を検討したいために, まずラットを高蔗糖含有飼料Diet2000) により飼育し歯周炎を発症させ, その病理組織学的変化に伴うラット腹腔マクロファージ (Mφ) 活性 の (動態について検討した。すなわち各実験期間飼育した後, ラットの歯槽骨を摘出し, これを培養, さらにその培養上清 (supernatant from alveo1ar bone cultures; Bone-sup) でMφ の貪食活性への影響を調べた。一方Diet2000飼育ラットの腹腔Mφ の貪食活性およびそのlysosome内酵素活性について, これを歯周炎の進行度との関連で検討した。
その結果, Diet2000で6ヵ月間飼育したラットの歯間部歯周組織には炎症性変化とともに軽度な歯槽骨吸収が認められた。このときのBone-sup刺激によるMφ 貪食活性は, 歯周組織に変化が現れる前から低下傾向を示し, またDiet2000飼育ラットの腹腔Mφ の貪食活性は, 歯周組織の炎症性変化の進行に伴って低下し, lysosome内酵素活性, 特にAcid Phosphataseは歯周組織の炎症の進行とともに上昇し, またβ-N-Acetyl-D-Glucosaminidaseは歯周組織に変化が起こる前から低下の傾向が認められた。
以上より, 高蔗糖飼料による歯周疾患の発症と進行にはMφ の感染防御機能の低下が関与し, さらに歯周疾患をもつ歯槽骨およびその構成細胞によってMφ 活性が影響を受けることが示唆された。

著者関連情報
© 特定非営利活動法人日本歯周病学会
前の記事 次の記事
feedback
Top