ウイルス
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総説
近年の原生生物ウイルス研究がもたらした新しい知見―分子生態学・分類学から分子進化学まで―
長崎 慶三外丸 裕司
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2009 年 59 巻 1 号 p. 31-36

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抄録

 海水1mlの中には105~108個,また全海洋中には1031個のウイルスが浮遊しているといわれている.その多くは海洋細菌や藍藻類などの原核生物を宿主とするファージ群であり,次いで真核性微生物(原生生物)を宿主とするさまざまなウイルスが優占していると考えられる.筆者らのグループでは,海産真核性藻類を宿主とするウイルスの研究を継続しているが,その過程で出会った種々のウイルスは,これまでに知られているあらゆるウイルスと大きく異なっていることが明らかとなった.それらの生態・生理,ならびに遺伝学的性状を解析することで,これまでのウイルス学分野に登場してこなかった幾つもの新たな知見が蓄積されつつある.本稿では,最近の原生生物ウイルス研究から発信された知見として,赤潮原因藻とRNAウイルス間の株特異的な感染性を支持するメカニズム,ガラスの殻を纏う珪藻類に感染するDNAウイルスおよびRNAウイルスの発見,ならびに原生生物ウイルス研究がもたらした新しいRNAウイルス進化ストーリー仮説,の3項目についてその概要を紹介する.動物ウイルスや植物ウイルスに馴染み深い読者の皆様に,一風変わったウイルスたちに関する読み物としてご笑覧いただければ幸いである.

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© 2009 日本ウイルス学会
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