2017 年 73 巻 2 号 p. I_241-I_246
複数地点での高潮による同時・集積被害に関する研究事例はまだ数が少ない.本研究では,伊勢湾と三河湾を対象に,複数地点での高潮被災を考慮した集積リスクの評価を行った.確率台風モデルによる1000年分の仮想台風を用いて,台風経路の確認を行った.伊勢湾のみを通る192個の台風については,気象庁の経験式を使用して高潮推算を行う一方で,伊勢湾と三河湾の両地点を通る805個の台風については,高潮解析と氾濫解析を行った.さらに,三河湾の高潮解析結果から,簡易的に高潮偏差を計算する算定式を作成し,その妥当性を検討した.高潮解析結果から被害額を算定し損失関数を作成した.伊勢湾と三河湾の損失関数と各台風の高潮偏差を使用して,すべての台風の被害額を算定した.年超過確率と合計被害額の関係を表すイベントカーブを作成し,集積リスク評価を行い,1つの台風に対する期待被害額を算定した.