2021 年 76 巻 5 号 p. I_719-I_727
2011 年の東日本大震災では,首都圏を中心に広範囲で公共交通機関がマヒし,多くの帰宅困難者が発生した.中京都市圏においても,東海・東南海・南海トラフ地震の発生により,同様の問題が懸念される.本研究では,昨今の変動性の高い人口流動を把握可能な流動人口統計を用いて災害時の帰宅困難者数及び避難施設や駅の滞留者数の推定を目的とする.流動人口統計の居住エリアデータを,住宅地図データ等を用いて細分化し,交通手段や移動滞留属性を付加した任意の時刻における詳細な OD データを生成するとともに,時空間内挿法を用いたシミュレーションを行った.その結果,既存手法と比較し,より詳細な人口流動を把握できるようになった.また,滞留者の移動抑制が避難施設への収容人数,駅滞留者の削減へ一定の効果があることを示した.