土木学会論文集G(環境)
Online ISSN : 2185-6648
ISSN-L : 2185-6648
地球環境研究論文集 第26巻
地球温暖化に伴う熱関連死亡による被害額
高橋 潔佐尾 博志本田 靖藤森 真一郎高倉 潤也
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2018 年 74 巻 5 号 p. I_53-I_60

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抄録

 地球温暖化により異常高温の頻度・強度の世界的な増加が生じ,またその結果として暑熱に関連した死亡リスクも高まることが懸念されている.本研究では,世界初の試みとして,世界全域を対象地域とした既存の熱関連死亡数の推計手法と統計的生命価値を組み合わせて用いることで,気候および社会・経済の将来変化の不確実性幅を考慮したうえで,気候変動に伴う熱関連死亡リスクの増加について金銭的な見積もりを実施した.その結果,熱関連死亡による被害額のGDP比は,緩和策が進むRCP2.6排出シナリオの場合,世界全体で1%未満に抑えることが可能であること,一方で緩和策が進まないRCP8.5排出シナリオの場合,世界全体で見て今世紀末に2%台となることが示された.また,被害額増加の主因として,現在の途上国では経済発展に伴うVSLの増加の寄与が相対的に大きいこと,現在の先進国は逆に経済発展よりも気候変化の寄与が大きいことがわかった.

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