2015 年 71 巻 6 号 p. II_109-II_116
荒川流域をモデルとして,流域圏全体を対象とした水利用システムに対する環境・社会・経済面にわたる様々な属性を網羅的に扱い,それらに対する住民の個人別選好をACBC(Adaptive Choice Based Conjoint Analysis)を用いて計測した上で,その多様性を評価するのと同時に,それらの選好を持つようになった背景について考察を行なった.その結果,属性間のバランス(41%),事業コスト(23%),地盤沈下(24%),水道水安全性(12%)をそれぞれ重視する4つの住民グループの存在が認められた.これらのグループは,性別,年齢層,居住地との関連はなく,環境問題全般,身近な水辺,水道水に関する意識といった心理的側面の特性を背景にそれぞれの選好を形成していることが明らかになった.