2018 年 74 巻 2 号 p. II_93-II_98
近年,我が国では,他の先進諸国に例を見ない程の急速な高齢化と同時に,身体的弱者の増加傾向にある.福祉政策により新しい公共建築物等でのバリアフリー化は進むものの,実環境では,詳細な物理的バリアの検証や把握は容易ではないことが車椅子利用者に寄り添ったバリアフリー化を妨げている.また,実環境の物理的バリアをAR(Augmented Reality)で可視化する既往研究では,実環境及び車椅子の通行軌跡の3次元モデル作成に時間がかかり,迅速性を欠く.そこで本研究では,デプスカメラの入力をリアルタイム処理することで効率よくバリアを検証しARで可視化する手法を提案する.3次元点群データから床面を認識し,車椅子の占める空間との干渉チェックにより,バリアとなり得る起伏や狭隘箇所を2cm単位程度で検出可能となった.