2019 年 39 巻 7 号 p. 647-652
症例は87歳,男性.冠動脈バイパス術を施行されていたが,低心機能が改善せず機能性僧帽弁閉鎖不全が徐々に悪化していた.心不全による入退院を繰り返したため,全身麻酔下で経皮的僧帽弁クリップ術が予定された.術中にクリップ部位確認のために逆流量を増やす目的で輸液負荷を行ったが,デバイスからの灌流液の流入と相まって左室前負荷の過剰から心拡大をきたし,クリップ把持に困難をきたした.また術後の体液管理にも難渋した.本術式は手技の局面に合わせた僧帽弁逆流の調節が求められるが,輸液負荷だけでなく血管収縮薬を併用して左室前負荷を適切にコントロールすることが手技の成功につながると考えられる.