日本補綴歯科学会誌
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原著論文
アルコール含有義歯安定剤であるホームリライナーが呼気中アルコール濃度へ与える影響の評価
岩脇 有軌後藤 崇晴岸本 卓大南 憲一藤本 けい子市川 哲雄
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2019 年 11 巻 4 号 p. 376-382

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抄録

目的:本研究では,アルコール含有義歯安定剤であるホームリライナーの使用が呼気中アルコール濃度(Breath alcohol concentration: BAC)へ与える影響を明らかにすることを目的とした.

方法:義歯安定剤3種類および粘膜調整材2種類において,口腔内を模した準閉鎖空間内でのアルコール臭の拡散実験を行い,におい強度の経時的変化の検討および露出面積による差の比較を行った.また,健常有歯顎者に義歯安定剤を使用した口蓋床を装着し,アルコール検知器でBACの測定を行った.粘膜調整材に対しても同様の方法でBAC を測定し義歯安定剤の結果と比較した.更に,装着5分後に撤去し,撤去後のBACを測定した.

結果:拡散実験では,義歯安定剤のにおい強度は露出面積に比例し,増加した.健常有歯顎者に対するBAC測定では,装着直後が最も高く,装着5分後までは酒気帯び運転の基準となる0.15 mg/Lを上回っていたが,経時的に減少し,装着30分後で0 mg/L となった.また,義歯安定剤のBACは粘膜調整材と比較して有意に高い値を示した.口蓋床撤去時には,一時的な増加は認めるが撤去10分後に0 mg/Lとなった.

結論:義歯安定剤はアルコールを放出し,BACに影響を与える可能性があるが,使用法の遵守または口腔外への撤去によりその影響を小さくできることが明らかとなった.

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© 2019 公益社団法人日本補綴歯科学会
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