日本臨床免疫学会会誌
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総説
抗リン脂質抗体症候群における血栓症リスクのスコア化
奥 健志
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2017 年 40 巻 6 号 p. 435-441

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抄録

  抗リン脂質抗体症候群(APS)は病原性自己抗体である抗リン脂質抗体(aPL)の存在下で出現する血栓性疾患である.APSにともなう血栓症は難治性で再発傾向が高いため,通常永続的な2次予防治療が必要だが,画一的な治療は問題が多い.実際に高力価のaPLや多のaPLが併存する場合はより血栓症のリスクが高くなることが知られている.すなわち,aPLのプロファイルの違いが血栓リスクの違いにつながるわけだが,その血栓リスクの違いを定量化するために抗リン脂質抗体スコア(aPL-S)とGlobal Anti-Phospholipid Syndrome Score(GAPSS)が樹立された.これらはいずれも大規模な患者コホートのデータをもとに作成され,aPL-Sは,aPLの力価や種類の違いによる血栓リスクにより注目し,GAPSSはaPLプロファイルを極めて単純化して,更に古典的血栓リスク因子を加えたものである.これらは,高リスクのAPS患者(もしくはaPL陽性非APS患者)を抽出する機能が高いことが示されている.ただし,これらが臨床応用されるにはaPL測定系の標準化や現在は国際分類基準に含まれていないホスファチジルセリン依存性抗プロトロンビン抗体の取り扱いなど解決しなければ問題がいくつかある.

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© 2017 日本臨床免疫学会
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