2017 年 40 巻 1 号 p. 40-47
がん幹細胞(cancer-stem cell or cancer-stem like cell, CSC)の存在が様々な腫瘍で確認されている.がん組織における割合は極めて少ないものの,これらの細胞は生体内における腫瘍増殖の起始点となり,再発・転移の原因として注目されている.CSCはがん根治を考えるうえで欠かせない細胞成分であるが,non-CSCに比べ化学療法や放射線療法さらに分子標的薬といった治療法に耐性を示すことが問題であった.当研究室では,CSCを標的とした免疫応答解析のために,これまで抗原性に優れたがん幹細胞特異抗原を複数同定している.ペプチド誘導した細胞傷害性T細胞(CTL)はいずれのケースでもin vivoモデルで効果的に腫瘍増殖を抑制する.即ち,CTLはCSCを識別可能であり,同時にCSCを標的とした効果的ながん免疫治療の開発が期待できる.本稿では明らかとなってきたがん幹細胞免疫応答に焦点をあて,CSCの単離法とCTL抗原の同定について概説する.