2015 年 38 巻 5 号 p. 421-425
症例は62歳男性.42歳時にSjögren症候群と診断され,更に57歳時には自己免疫性肝炎を合併し,以後ステロイド内服治療を受けていた.2008年11月より下痢と下肢の浮腫の精査のため当科に紹介され,同年12月より急速に血小板減少が進行したため2009年1月9日に入院した.入院時著明な低アルブミン血症とCRP高値,PA-IgG高値を認め,骨髄穿刺所見より自己免疫性血小板減少性紫斑病(autoimmune thrombocytopenic purpura:AITP),また99mTcヒト血清アルブミンシンチでの回腸からの蛋白漏出所見より蛋白漏出性胃腸症(PLE)と診断した.過去にLE細胞,抗ds-DNA抗体陽性が指摘されており,SLEが基礎疾患と考えられた.ステロイドパルス,大量ガンマグロブリン療法は無効で,リツキシマブ投与によりAITPのみ改善した.一方,PLEはリツキシマブにもシクロスポリン,シクロフォスファミドにも反応が乏しかったが,オクトレオチドの200μg連日皮下投与及び中鎖脂肪酸(MCT)調理油を用いた低脂肪食療法を開始したところ著明に改善した.SLEに伴ったPLEの難治症例に対してオクトレオチド皮下投与および中鎖脂肪酸食が有効な治療手段となる可能性が示唆された.