2014 年 37 巻 2 号 p. 90-95
1991年のMAGE抗原の発見以来,腫瘍免疫学は急速に発展し,数多くのヒト腫瘍特異抗原が報告されている.著者らも,遺伝子発現クローニング法,バイオインフォマティクス,Reverse immunology,Transcriptome解析,網羅的ペプチド解析などの方法を駆使して,多くのヒト腫瘍抗原を同定してきた.近年,ヒト固形腫瘍の根幹をなすがん幹細胞の分離によって,がん幹細胞特異抗原も明らかにしてきた.一方で,これら基礎研究成果を創薬につなげるために,T細胞エピトープペプチドを用いたがんワクチン臨床試験も推進している.臨床試験ではワクチンの安全性,腫瘍抑制効果,免疫効果を検証し,最適プロトコルとバイオマーカーを見出さなければならない.臨床試験の結果を基礎研究にフィードバックし,より効果の高いがんワクチンの実用化をめざす創薬の道程と展望について概説する.