日本臨床免疫学会会誌
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総説
関節リウマチにおける免疫寛容の破綻とその遺伝的背景
高地 雄太
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2010 年 33 巻 2 号 p. 48-56

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抄録

  関節リウマチ(RA)は,環境因子と遺伝因子が関与する多因子疾患である.RAに特異性の高い自己抗体として抗シトルリン化ペプチド抗体(ACPA)が知られるが,その出現の背景にはシトルリン化された自己蛋白に対する免疫寛容の破綻が起きていると考えられる.ここ数年に行われたゲノムワイド関連解析により,複数のRAの遺伝因子が明らかになったが,これらの遺伝因子のいくつかはこの免疫寛容の破綻に関与しているものと考えられる.例えば,PADI4は蛋白をシトルリン化する酵素であり,RAにおける自己抗原の産生に関わると考えられる.また,ACPAの出現とHLA-DRB1遺伝子の特定のアレルが関連することは,シトルリン化ペプチドがHLA-DRによって抗原提示されていることを示唆する.一方で,T細胞やB細胞に発現するPTPN22, FCRL3, CD244, BLK, CTLA4などの遺伝子の多型と疾患感受性の関連が報告されているが,これらの多型はRA以外にも複数の自己免疫疾患に関連し,リンパ球の自己応答性に影響を与える因子であると考えられる.このように,RAでは免疫応答の各フェーズで働く遺伝因子が積み重なることによって,免疫寛容の破綻をきたし,疾患発症へつながっていくものと考えられる.

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© 2010 日本臨床免疫学会
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