日本内科学会雑誌
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心血管系と時間生物学
矢永 尚士丸山 徹
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1993 年 82 巻 5 号 p. 761-766

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抄録

心拍や血圧は規則的な変動をくり返している.大集団を対象とした統計によれば急性心筋梗塞や急死の発症好発時間帯は午前中に存在する.生体現象は周期性変動と非周期性変動を示すものに分けられるが,周期性変動を生体リズムと呼ぶ.周期性の有無はクロノグラムの作成とその分析により判断される.分析法としてはフーリエ解析,最大エントロピー法,自己相関法,コサイナー法などが用いられる.生体リズムには生活リズム(運動・安静,覚醒・睡眠,食事など),環境リズム(昼,夜,明暗など)の外因が深く関与する.さらに基礎疾患,自律神経,体液性変化がリズムに影響,修飾する.周期性変動が臨床的に内因性か外因性かを鑑別することは困難であるが,基礎的には少なくとも刻時機構(生体時計ないし体内時計)の一つは視交叉上核にあることが証明されている.生物リズムの概念は新しいものではないが,心血管系への応用は最近のトピックであり,その臨床的意義について検討が続けられている.

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